1996年11月26日〜12月3日

西岡良弘展






「唐津に来ませんか?」

久し振りの良弘氏の声であった。

聞くと窯出しを終えたばかりだという。

朴訥だが自信を秘めた言葉が耳に残った。

ー早々 唐津へ飛ぶ。

陶房には初秋の風が吹き抜けていた。

極上に熟成した窯変花生、

ほんのり茜さす斑唐津茶碗の艶、

軽妙な筆運びの絵唐津は水墨画のような趣に充ち

自由闊達な食器は楽しさに溢れていた。

いずれも逸品であり、端整な姿の向うに

燻銀の静かな意欲が顔をのぞかせていた

唐津焼の伝統を踏襲し乍らも そこには歳月に裏打ちされた

新しい”良弘唐津”が少しずつ姿を現しはじめている。