2001年2月21日〜3月2日

茶之湯の世界 「風炉、釜、炉椽」展






寒月、冴え渡る夜だった。

露地で吐く、息も白い。

ー咳き入りすると、釜から幽かな蒸気が立ちのぼっていた。

挨拶を終え、炭手前が始まる。

炭斗から羽箒、釜鐶、火箸、香合…

やがて、釜敷の上に釜がゆっくりと上げられる。

今まで炉中に半身を隠していた「茶席の主」が客前に初めて全体の姿を現す。

あたかも、歌舞伎役者が見得を切るような

大きな見せ場の瞬間である。



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 2001年3月7日〜3月23日


松田正平 書展
 




「そら」とも「くう」とも読める。

こだわりのない強い線だ。

ピーンと張りつめた空気。

反面、茫洋とした広さも感じる。

70年の画業が成せる技なのだろうか。

じっと視ているとさまざまな心象を連想させ、

読み方はどうでもよい、という気になってくる。

正平先生に、この「文字」を書かれたときの気持ちを伺ってみた。

微笑みながら

「何も考えとりゃせんよ」

予想通りの答えが嬉しかった。


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 2001年4月9日〜4月27日


杉田久女 書展
 




「大正、昭和にかけて、女流俳人として最も輝かしい存在であった」

とその師、高浜虚子に評された杉田久女。

しかし、ホトトギス同人から突然除名され、その様々な憶測から

「久女伝説」と呼ばれるに到り、句作に激しい情熱を注いだその生涯は

後世多くの文芸作品にも取り上げられている。

杉田久女の句は今も尚、多くの人々に感銘を与えているが、

実筆の書は何を語りかけてくれるだろうか。


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 2001年7月10日〜7月20日


古谷道生展
 




早いもので、7月20日は古谷道生さんの一周忌です。

6月には信楽の工房で偲ぶ会が開かれ、全国から多くの古谷ファンが訪れ、

彼の作品やあの人柄についての話題で花が咲きました。

古谷さんとは、たくさんの思い出がありますが、

なかでも原始的な土器造りを求めてインドネシアの小さな村を訪れ、

嬉しそうに轆轤を挽いていた姿が強く印象に残っています。

「哀しみは 時が 忘れさせるよ」

ーとは言われるものの、今の私にはまだ考えられないようです。

息子の和也君も、お父さんの跡を継いで作陶に励んでいます。

久々の「古谷道生展」御高覧頂ければ幸いです。


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 2001年10月9日〜10月19日


時代 根来展
 




……彩色褪せ 幾重もの時代を生き抜いてきた木彫り佛

……たっぷりと酒を吸い込み とろりと旨みをます釉肌の唐津盃

……変色した紙片に筆跡された良寛書の風雅枯淡

……炎と風化により剥落と敗れた鉄の風炉・釜……

時代を経てきたものは趣深い

しかし、美しく歳月を重ねたものでなければいけない

そこで漆となると、明快な「朱と黒」のほのぼのとしたぬくもり

もちろん「根来」ということになるだろう

(誰かさんの好きなものより)


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 2001年3月7日〜3月23日


西岡良弘展
 




作品の鑑賞に比較ほど怖いものはないと云われるが、

茶陶の黄金期と称される桃山から江戸時代初期の古唐津と

西岡良弘氏の作品を並べて観る機会に恵まれた。

「時代」というどうすることも出来ない重みは別として、

「唐津」の伝統的な幾種もの釉薬の発色、釉膚を突き抜け滲み出る陶士の

造形力など、良弘氏の作品はかなり高い水準に達しているとの評価を得ていた。

ひと月に平均なんと三回も登窯を焚き、常に焼成に工夫を重ねていることから

考えればあたりまえと言えるかも知れない。

良弘氏の性格からか、作風は「唐津」にしては多少繊細すぎるきらいが感じられたが、

何か心境の変化でもあったのだろうか、今回の出品作に触れていると、

今までにない良弘氏独特の味わい深い雅趣を覚えた。

新たな「良弘唐津」が静かに牙を剥きはじめた。