2002年2月5日〜2月22日


松田正平書展






新春の一日、松田先生をお訪ねした。

久し振りのせいもあってか、お話しが弾み硯から墨

そして「書」の魅力へと話題が及び長居をしてしまった。

先生は時計を見て

「おっ、お昼じゃないか。何もないが食事をとっていくとよい。」と云われた。

台所でそれぞれの大ぶりの茶碗に蕎麦粉を入れお湯が沸くまで待った。

シュンシュンと音をたてた熱湯を茶碗に注ぎ、

先生も私も黙ったまま捏ねた。

随分と長い時間だったように思う。

十分に粘り気が出ると生醤油をかけていただいた。

陽だまりの中で食べた蕎麦がきは暖かな春の香りがした。

画業七十年有余念、先生は今年、数えで九十歳になられる。



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 2002年3月13日〜3月22日


曾津八一書展
 




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 2002年3月28日〜3月30日


佐村憲一 「小竹刀」展
 





佐村氏は周知の凝り性である。

グラフィックデザイナーたるもの、与えられた素材の魅力を最大限に生かさねばならない。

氏は茶の湯を通じ「竹」と出会ってしまった。

以来、小刀ひとつから成る掌の職人芸「菓子切」を暇が有っても無くても

ひたすら削りつづけている。

数を作ったから分かるものではない。

しかし、数をこなさなければ掴めないものもある。

佐村憲一氏の手遊び、竹製菓子切を

「小竹刀(しょうちくとう)」と名付けたい。



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 2002年4月15日〜4月27日


池田巖 漆芸展
 





池田氏の工房には古代人々の祈りを形象化したテラコッタ母神像や

獣頭身ブロンズ像はたまた鮮烈な色彩感覚あふれるモダンアートが飾られている。

いずれも創造期のエネルギーを充たす、つわものたちである。

氏の作品にふれていると一点一点にさまざまなイメージがわいてくる。

北極星

ジャンヌ・ダルク

ストーンヘンジ

一輪の野草

中世の聖堂にたたずむ尼僧

セロ弾きのゴーシュ

田園をわたる風



「竹」一片を極限まで昇華させ凛とした香気を放つ

そんな池田氏の作品が大好きです。

巖さんちょっと誉めすぎでしょうか。


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 2002年6月17日〜6月28日


井上有一 展
 




井上有一を偲ぶ狼涙忌の法要が今年も6月に池袋の法明寺で営まれる。

書道界のありかたに疑問を抱いた有一は書壇から離脱し一匹狼となり、

独自の創作活動に生涯の命を賭けた。

「自己の内にある巨大な力をねじふせたときオレの作品は

巨大な怪物 −−とてつもないものーー と化すだろう」

と記した有一の想いどおり、遺作の書は高い評価をうけ、

国内はもとより海外の主要美術館でも展覧されつづけている。

18回目となる今年の狼涙忌。

長女の花子さんが、父、有一について初めて語られるという。

どのようなエピソードがとびだすだろうか…


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 2002年10月22日〜10月29日


三原研 「b器」展
 




遥か…はるか昔、大地に根付いた祖先は

「祈」「望」「魂」を不変のものにするため、形象を泥土に託した。

形にとらわれない創作、型にとらわれようもない造形ー。

三原研の「b器」には、この古代の「命」が脈々と息づいているような気がしてならない。

おおらかでいて繊細…矛盾する二つの感覚を

ひとつの世界に焼き上げてしまうのだからなんとも楽しい作家である。

その想いもよらぬ造形感覚に目を見張るのは私だけではないはずだ。

ひょっとすると彼の魂は古代に遊び、

現在から未来へと自由に浮遊しているのかもしれない。


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 2002年11月12日〜11月18日


田中敏雄 漆芸展