2024年3月6日〜15

上田泰江展V





今年の二月初旬、上田さんから留守番電話をいただいた。

その内容が何とも味わい深い。

ゆっくりとした口調で、

「綾部の上田です たぁ〜〜いへんな雪です

東京は寒いですか? 皆さんはお元気ですか?

わたしは、この身体が埋もってしまうほどの大雪を

中からただ眺めているだけです

いいんですけど・・・身動きはできません

ほぉんとうに美しいですよぉ 真っ白です

そしてまだいっぱい降っています

それだけのことです さようなら」



NHKで放映されたドキュメント番組で

「風景だけでなく 生きているといろんなことが起こったりする

それがいつか絵になっている」

と語った上田さんの屈託の無い笑顔。


厳しくも豊かな自然に囲まれた里山での独居生活は二十年に及び、

二月二十六日で九十四歳を迎える。


阿曾一実



2024年4月16日〜25

李朝家具展





李朝ものは凛として緩やかだ


簡素で大らかな李朝時代の家具


木肌の柔らかな削り面

家具に合わせた瀟洒な金具

時代を重ねた風合いの温もり


気を張らないその魅力に触れてほしい

何気ない”ゆらぎ”がなんとも心地よいのだから



阿曾一実


2024年6月5日〜14

六田知弘展





蓮の華が開きゆくのを眺めたことがあります


朝焼けからほんの僅かずつ開き始め 午前十時頃に開花

陽が高くなるにつれ 両の手を窄めるように閉じゆき

正午過ぎには元の蕾へと


陽射しが花びら一枚一枚を透かす光景は神々しく

花托に仏さまも座りたくなる訳です


苦しみから解放され 一瞬の幻をみたような

六田知弘氏の蓮華


在世では叶いませんが 華の香満つ浄土に佇むが如くに


阿曾一実



2024年9月17日〜27
田中敏雄 遺作展



生地の削りから漆の工程全てにおいてこだわり抜いた田中敏雄氏。
昨年九十六歳で永眠された。
法華経、無門関に始まり、空海、道元を語る時の真剣な眼差しと語り口。
槍カンナや特大のノミを手にとり、
「この道具は、このように持ち、このようにして・・・」
と、扱い方を見せていただいたこともある。
電球一燈のお部屋には野花が常に生けてあり、
新たな作品を前にお話をした時間が懐かしい。
凛としてやわらかな手触りと年月を重ねる度に艶を深める田中氏の漆作品。
その独自の創作を顧みるべく、
壮年期から最晩年までの作品を一堂に展覧致します。
阿曾一実


2024年10月18日〜22
井上有一展

六年ぶりとなる井上有一展を開催いたします。
近年は、様々な国の美術館やアートフェアでも
有一の作品を目にするようになりました。
今回は大作から小品まで幅広く展覧。
秋麗の一日、お楽しみください。

阿曾一実

2024年11月18日〜24
菅原敦夫展




2024年12月2日〜8
丸山正展


昨年ロードショーの「銀河鉄道の父」を観賞したときのこと。
主演は呉服商を営む宮沢賢治の父、役所広司氏。
その着用する無地の着物が燻銀のように渋くも、
その言い知れぬ艶っぽさに目を引かれていた。
放映終了後のテロップに、なんと「衣装・丸山正」の記載。
その数日後に丸山氏と会う約束をしていたので尚更驚いた。
丸さんの衣装は粋だ。
「唯一無二の布」を纏うと、その風がフワリと身体を巻き込み、
意識をも変えられてしまう。
そして、知らぬ間に微笑んでいる自身に気付かされるのである。
阿曾一実